徐々に浮上するような感覚。少しずつ感覚が身体を構築し、自分が自分だと認識出来るようになる。ぼんやりと瞼を上げ、ようやく、眠っていたのだと気付いた。

 真っ赤な双眸。

「うわあああ!?」
 驚き逃げるように跳ね起きようとして……それが、イリヤだと気付いた。
 イリヤは寝ている俺の上に乗って、感情のない瞳でこちらを見ている。いや、きっと怒ってる。俺が驚いて声を上げたもんだから……。
「時間がないわ、早く準備して」
 背筋が凍り付くほど冷たい声でそう告げて、イリヤは俺の上からどいて立ち上がる。夜の闇の中、銀糸がほのかな明かりを受けて煌めいていた。



   ――笑顔の向こうに――



 道場で木刀を一本取り出し、いざというときに使えるようにする。魔術回路の正しい使い方はイリヤが教えてくれた。いや、無理矢理覚え込まされたという方が正しいだろうか。無理矢理魔力を流し込まれ、それを使い切るために――――あの時の激痛を思いだすと、寒気が走る。だが……それでもなお、アーチャーに襲われたときのような投影が再びできるとは思えない。強化の方が、遥かに成功率は高いのだ。サーヴァント相手に戦うことはできなくとも、護身用の何かを持っておくのは悪くない。
 軽く一度振ってみてから扉が吹き飛ばされた門をくぐると、遠坂もイリヤも準備万端といった様子でこちらを睨んでいた。
「遅い」
「……ごめん」
 一言で切って捨てられ、苦笑しながら謝る。怒られるのも当然と言えば当然か。
「じゃ、行きましょ。大聖杯の元へ」
 昨日と同じように両手で『桜』を抱え、イリヤが歩き出した。

 柳洞寺。かつてキャスターを倒し、そして……セイバーを失った、場所。この地下に、目的の大聖杯があるという。
 階段を上らず脇にそれ、道なき道を歩き出す。獣道さえない場所を、木々をかき分けながら歩く。思いの外険しく、時には足下が崩れかけたり、絶壁に近い岩肌を滑り降りたりしながら、イリヤが知っているという地下への入り口へと向かった。
 しばらくして、山の裏手らしき所に出た。少しばかり広く、枯れ木や倒木が多い。山側は岩肌続きで、その下を小川が流れている。多分注意していなければ分からないだろうが……何かありそうだ、と感じた。
「む――――本当にこの辺りなの?」
「おかしいわね、そのはずなんだけど」
「士郎、何か入り口らしきものは見当たらない?」
「らしきものって言われてもなあ……何かありそうなんだけど」
 何かありそうだというのはよく分かるのだが、それ以上のことが分からない。構造を見通そうにも、あまりに範囲が広すぎて無理だ。ならばもう少し歩き回って様子を見るか。
「いかにもな岩の裂け目とか、相当古くさそうな社とか、何か入り口を指し示すようなものはあるはずよ」
「そうは言っても、めぼしいものは……小川?」
 そうだ。小川があるということは、どこかから水が流れているということだ。それも、この幅ならちょろちょろと流れ出るような湧き水ではない。山の上から流れているのでなければ、どこかにこの川が存在出来るような穴が空いているはずだ。そして、山の上からだとすれば滝になっていてもおかしくない。しかしそれらしい音はしない、ということは。
「あの小川の先。何となく怪しい感じがする」
 実際に近づいてみると、遠目で見た以上に怪しかった。かまくらでも作ろうとしたかのように岩が積み重ねられているのだ。その中から、小さな清水が湧き出している。
 さらに近づき、中をのぞき込む。奥に通り抜けられるかと思ったが、巨大な岩が立ちふさがっているのが見えた。通れないのだろうか? そう思い、目に魔力を通して構造を解析しようとすると……空っぽだった。
「――――当たり。この岩、簡単にすり抜けるわ」
 遠坂が振り向くことなく暗い闇の中へと進入していく。
「俺が最後に行くから、イリヤ、先に行ってくれるか?」
 コクリとイリヤは頷き、遠坂に続いて奥へと消えていった。周囲を確認し、俺も中に向かう。

 暗闇がどこまでも続く。濡れた道をずっと手探りで進んでいく。道はずっとずっと下へと続く下り坂だ。背を後ろにつけ、ゆっくり降りていかないと闇に捕らわれそうな錯覚に陥ってしまう。いや……もう闇に捕らわれてしまっているのかもしれない。いつの間にか、永遠に続くや身の奈落の底へと。
「アーチャー、先を確認してきてくれる? こうも見通しが悪いと気が滅入るわ」
 遠坂の声で、現実に引き戻された。

 そうしてどれほど進んだだろうか、唐突に闇は終わった。
 光蘚の一種だろうか、ぼんやりとした緑色の薄明かりが奥へと続く通路を照らし出していた。ここからは明かりも必要ないらしい。通路は生々しい生命力に満ちあふれ、そのあまりの強さにかえって吐き気を覚えた。
 誰も一言も発さない。死地に飛び込んだのだ、緊張を和らげては死に繋がる。しかしそれはそれで重苦しさが……。
「私が先頭を務めよう」
 突如アーチャーが姿を現し、先頭に立って歩き出す。その背中が妙に頼もしい。俺もいつか、あれぐらい強くなれるのだろうか。ふと、そんな考えが頭をよぎった。

 沈黙の中、通路を歩く。先程までの錯覚を奈落の底と表現するならば、この通路はおぞましい生物の腹だ。消化器官を通り抜けるような嫌な感覚は、一層吐き気を催させる。壁なんて今にも動き出しそうだ。
「飲まれないで」
 唐突に振り向き、声をかけてくる小さな少女――――イリヤ。彼女の方が幾分も強いらしい。これじゃ兄として失格だな、と顔には出さず苦笑した。気合い、入れ直さないとな。

 そうしてしばらく、通路を抜けると突如、広い空間が広がっていた。そこに大小合わせて三つの影が立っている。予想通り、ライダーと、アサシンと……!?
「な……」
 ――――息が詰まった。
 驚きで言葉が出ない。
 そんなはずがない。
 そんなはずがないのだ!

 ……あの日失った、彼女がここにいるはずなど。

「なんでだよ、セイバー!!」

 もう一つの影、それは黒い甲冑に身を包んだセイバーだった。





   ―Interlude―



 それを予想していたのは、おそらく一人だけ――――そのアーチャーは逆に、自身が想像していた程にも驚かなかった。これまでを振り返れば、自明のことであったのは間違いない。キャスターの残骸と同様、セイバーもまた利用されていたとしてもおかしくないのだ。ただ違う点が一つあるとすればおそらく。彼女はその残滓を利用されているのではなく、別の呪いによって縛られているのだろう。キャスターの残骸と違い、その瞳に理性が感じられる。だからといって助けられるわけでもなく、おそらく倒す以外に解き放つ方法はない。
 バーサーカーも姿を現し、アーチャーの隣に並ぶ。二対三、アーチャー自身は負けるつもりなどないが、だからといって不利であることは否めない。並のサーヴァント三人であればバーサーカー一人でなんとかなるだろう。だが相手もまた最優のサーヴァント、セイバーを有している。バーサーカーが一対一で戦ったとしても、確実に勝てるかどうか。だが、私では……。彼女と戦いたいという一種の拘りを捨て、アーチャーはアサシンとライダー、二人を相手にすることを選んだ。手にはいつも通りの双剣。バーサーカーがセイバーを倒すまで防ぎきる……いや、二人を片づけセイバーも倒す!
「■■■■■■■■■■■ー!」
 アーチャーの考えを察したのか、バーサーカーがセイバーに向かい突進する。それが引き金。両陣営の総力戦が、ここに開始された。



 初めて見る、複数のサーヴァント同士の戦い。それを黙ってみるしかないことに、凛は焦りを覚えた。
 どちらにしろ、これ以上の最前手はなかった。臓硯が自由に聖杯の力を使い切るようになる前の、闇の住人にとって最も力が鈍る頃。タイミングも間違えていないはずだ。誤算があるとすれば、ただ一つ。相手の戦力が、予想を遥かに上回っていたと言うことだけだろうか。
 セイバーさえいなければ。彼女たちは、セイバーの存在を想定することなく議論を重ねていた。それがよもやこのような仇になろうとは、彼女もイリヤも考えていなかったのだ。楽観視していたと言われても仕方がないだろう。実際、凛はどこか敵を甘く見すぎていたのだ。それが遠坂凛という少女の悪癖――――もっともそのことは彼女自身が認識しており、また事態がそれを上回っただけなのであるが。
 バーサーカーはセイバーと互角に切り結び、互いにそれ以上の動きを取れていない。アーチャーはライダーの鎖とアサシンの短剣による波状攻撃を、なんとか双剣によって凌いでいる。だが、所々に受けた傷は徐々に増えてきていた。無理もない、一人で二人を相手にしているだけではなく、マスターたちを狙う攻撃をも防いでいるのだ。これで無傷で済ませろという方が難しい。
 マスターである二人の少女はそれぞれに思う。何か手を打ちたい、でもそれは許されない、と。彼女たちの従者は、全身全霊を賭して戦い続けている。迂闊に動き、その結果自身の身を守れなくなれば……それこそ終わりだ。止まぬ金属音、その中、動けぬ状態に歯がみする。

「■■■■■■■■■■■ー!?」

 突如、バーサーカーの咆哮が異質なものに変わった。何かに驚くような声。その足下には……暗い闇が広がり、絡みついていた。
「嘘……何よ、あれ。あんなの……あんなの、あっていいはずが――――!」
 イリヤが悲鳴にも似た叫び声を上げた。臓硯がいないにもかかわらず、黒い影の持つ力が展開されている。あの呪いはそれほどの力を持っているというのか。バーサーカーを飲み込まんと。セイバーの足下から広がり浸食する闇をイリヤは睨み、歯噛みする。
「バーサーカー!」
 不安に胸が張り裂けそうになる。だがそれをイリヤは押し殺し、ただ力づけるために己が従者の名前を叫ぶ。
「■■■■■■■■■■■ー!」
 答えるように狂戦士が咆える。しかし最狂と最優の剣戟はさしたる変化を見せず、ただアサシンが微かに笑いを漏らしたのみ。死闘は続く。永遠かとも思われるような死闘。

 いや、それは決してあり得ないこと。

 徐々に、バーサーカーの剣が鈍り始める。呪いが徐々に体を飲み込まんとしてきている今、既に足首は黒い泥の中に完全に飲み込まれ、伸びる触手が腰までも覆わんとしていた。それに耐えきれなくなったのか、明らかにバーサーカーの剣は力を失いつつある。むしろそこまで保った方が奇跡なのかもしれない。神性の高いバーサーカーにとって、純粋な呪いである泥は天敵だ。飲み込まれようとしてなお、その力を保ち続けるというのは並大抵ではない。
 しかし、下り坂へと入ったことは否めない。あとはただ落ちるのみ。それが分かるからこそ、バーサーカーは唸る。ただ激しく咆哮する。

「■■■■■■■■■■■ー!」

 ひときわ大きな方向が洞窟を震わせる。洞窟そのものを崩壊させかねないような迫力。その場にいるものが皆、一瞬そちらに気を取られる。
 その瞬間、アーチャーが凛に目配せをした。僅かなアイコンタクト。意味までは分からなかったが、ただ、備えろと言ったことだけは分かった。

 ニヤリとアーチャーが笑ったのを見て、アサシンは嫌な予感を覚えた。何故そこで笑うのか。何故そこで笑えるのか、何か秘策があるとでもいうのか。
 笑みの正体こそ分からないものの、アサシンは勝負を決めるべきだと決心した。それこそが、アーチャーの狙いだと気付かずに。
「終わりだ、アーチャー!」
 最後に残していた短剣を一斉に放つ。頭、首、心臓、そのどれもが必殺だ。そして同時に襲いかかるライダーの釘剣は、いずこに逃れようと食らいつくことが必死。それは一種の檻である。どこにも逃れようのない檻。それは捕らわれれば、ただ死を待つのみとなるであろう地獄の牢獄だ。
 だが。
 ク、と笑いを漏らし、アーチャーはその場に構える。そして短剣を全て双剣ではじくと、勢いそのままに釘剣とアサシンに向け双剣を投擲した。歪な弧を描き双剣が飛ぶ。しかしアサシンは余裕を持ってその一方を避けた。もう一方もまた釘剣の勢いを逸らすことができない。
「グッ」
 アーチャーの左肩に釘剣が突き刺さる。次の瞬間、ライダーは鎖を引き寄せアーチャーを振り回そうとし――――

 ――――I am the born of my sword.

 ――――鎖が一直線に張りつめた瞬間、それに沿って飛来した刃に胸を貫かれた。
 ほんの一瞬、だが確実に起こるであろう硬直。身動きを封じることを狙った釘剣だが、その場に縫い止められたのはアーチャーではなく、むしろライダーだった。速さで劣るアーチャーがその硬直をこそ狙ったのだと気付いたアサシンは、すぐさま行動を起こす。
「ク……だがそこまでだ、その心臓貰い受ける!」
 瞬間、アサシンの本当の腕が解放される。かつてランサーを破り、またセイバーを倒す一因ともなった宝具、妄想心音(ザバーニーヤ)。アーチャーは即座に両手に剣を――――何故か放ったはずの剣と同じものを――――両手に持ち身構える。だが遅い。この宝具は発動してしまえば、いくら身を守ろうと相手を殺せるのだ。そして身構えたところで発動は妨げられない。そしてアサシンの宝具が発動されようとした瞬間、ザシュ、という音が響いた。



「■■■■■■■■■■■ー!」

 バーサーカーが咆哮をあげる。アーチャーの動きに呼応したのか、全力で斬りかかろうとし……だが、飛び退ったセイバーに距離を取られた。僅かな、だが足を飲み込まれつつあるバーサーカーにとって、決して届かない距離。そこでセイバーは黒く染まった聖剣を解放する。すさまじい風が吹き荒れ、魔力が渦を巻いて荒れ狂う。恒星のようなエネルギーを秘め、彼女がその剣の力を振るおうと構える。

約束された(エクス)――――」
「■■■■■■■■■■■ー!」

 再び、バーサーカーが咆えた。



 一瞬、アサシンは事態を把握し損ねた。何か音が鳴ったという程度の認識でしかなかったのだ。だが、腕を振り下ろそうとした瞬間。
 その腕が、肘で断たれていることに気付いた。
「な……ぜ!」
 慌ててアサシンは飛び退き、距離を取る。
 アサシンは、アーチャーの持つ双剣の能力に気付かなかった。干将・莫耶。揃って一対であるこの陰陽剣は、互いに引き合う性質がある。一旦は避けたアサシンだが、干将がアーチャーの手元にある陰陽剣と引き寄せ合い戻ってくるのに気付かなかったのだ。
 どのような軌跡で戻ってくるかなど、本来想像出来るはずもない。相手の動きが予測不可能であれば、狙うこともできないはずだ。僅かな隙間を縫うような可能性。賭に出るにはあまりに分が悪すぎるだろう。普通なら不可能だ。

 ――――しかし。それを成し遂げてこそ投擲者(アーチャー)

「今だ、凛!」
 アーチャーが叫ぶ。瞬間、凛とイリヤが目配せをする。確認はただ一つ、互いの認識が共通しているかどうかのみ。互いの顔に浮かぶ緊張を見て、取るべき手段を確認する。頷く暇などない、この瞬間こそが最大の好機でもあるのだ。狙うはただこの一瞬。そして二人の令呪がそれぞれの輝きを放つ。

 まず動いたのは凛、狙うはただ一点。
「アーチャー、バーサーカーの足を断ち切りなさい!」
 凛の令呪が輝き、熱を放って消える。瞬時に膨大な魔力が送り込まれると、その瞬間、アーチャーは全くのタイムラグもなくバーサーカーの背後に移動する。それと時を同じくして、手には新たな剣。既に構えられ、後はただこれを振り切るのみ――――!
「ぬおおおおおぉぉぉぉ!」
 気合い一閃、アーチャーはバーサーカーの足を膝で断ち切る。膝から下を失いながらも、バーサーカーは泥の束縛から逃れた。自由を得たバーサーカーは耐えに耐えた怒りを発散するかのように、雄叫びを上げる。
「■■■■■■■■■■■ー!」

「――――勝利の剣(カリバー)!!」

 だが、まだ足りない。まだセイバーの剣の方が早い。その差は一瞬、しかしバーサーカーの攻撃を待たずして黒い閃光は背後の者たちも含め、全てを焼き尽くすだろう。ならばまた、これを覆すのも令呪の力のみ――――!
「バーサーカー、セイバーを断って!」
 イリヤの令呪が輝き、魔力の奔流が荒れ狂う。それらが全て一瞬にしてバーサーカーに流れ込むと、バーサーカーが跳ぶ。
 膝から下を失い、まともに跳ぶことなどできようはずがない。呪いに力を奪われ、本来の力など微塵も出せないに違いない。だがそれでもこのギリシャ最大の英雄には十分。セイバーの剣が振り下ろされるのに僅かに遅れながらもバーサーカーはセイバーに届く。そしてバーサーカーもまた、その剛剣を振り下ろした。
 黒い光がバーサーカーの体を貫き、一瞬にしてその命をいくつも蒸発させる。だが、その一度で完全な死には至らない。(ザン)、とバーサーカーの剣がセイバーの左肩に食い込む。

「■■■■■■■■■■■ー!」

 黒い聖剣の輝きが、次々とバーサーカーの命を奪っていく。本来なら一瞬で蒸発してもおかしくない程の熱量がバーサーカーを襲う。傷跡は焼け焦げるといった範囲を超え、融解を始めた。次の瞬間には、この巨体そのものが蒸発したとておかしくない。
 だがそれでも、バーサーカーは止まらなかった。灼熱の黒い恒星をぶつけられながら、なおも振り下ろした剣が少しずつセイバーの体を切り裂いていく。次の瞬間には消え去りそうなほど、命どころか存在そのものが危うい状況。だがそれでも……後ろに、イリヤが居る。彼が守るべき存在が居る。だというのに、どうして負けられよう? 彼が光の中に消え去れば、次は彼が守るべきマスターだ。
 守るべき存在が居る。それを守りたいという思いが、彼を現世に留め続ける。既にその身は死んでいる。十二しかない命など、とうの昔に尽き果てていよう。だがその程度では滅びない。守るべき存在が居るのに、負けられるはずがないのだ。なぜならば、彼はギリシャ最大の英雄なのだから。そして、最強のマスターのサーヴァントなのだから! 

 故に、バーサーカーは尽きたはずの命を振り絞り、その身を焦がしながら剣を振り下ろし続ける。それはほんの刹那の出来事であり、その結末もまたほんの紙一重のものだった。だが。

 その命を全て使い切る寸前、バーサーカーの剣はセイバーの心臓を、そこに存在する霊核ごと粉砕した。
 本来の力にも届かない、決して全力とは言えない一撃。だが令呪の後押しを受け、バーサーカーは相手を倒して見せた。その姿は、まさしく英雄と呼ぶに相応しく。

 互いに相手に刃を突き立てたまま。最狂のサーヴァントと最優のサーヴァントは、その終わりを迎えた。

「バーサーカー!」
 イリヤが悲鳴を上げ、駆け寄ろうと走り出す。それを押さえ込もうと遠坂と俺も走り出し、イリヤを抱きかかえ――――。

 ――――その瞬間。
 刃の雨が空洞に降り注いだ。



   ―Interlude Out―





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第10話に続く

(初版:03/04/2006)




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